ケヴィン・J・ブラウン(原著) , 石原 薫(翻訳)
※1点の税込金額となります。 複数の商品をご購入いただいた場合のお支払金額は、 単品の税込金額の合計額とは異なる場合がございますので、予めご了承ください。
「ここに描かれた歴史は、私たちが世界を、互いを、究極的には自分自身をどのように見てきたかという知覚の歴史でもある」(序文より)
地図の歴史は、科学/宗教、物理的/精神的、現実/虚構、理論/実用、中立性/説得性の間を行ったり来たりしてきました。ある時はローマ帝国内の移動手段を表す実用的な道具、ある時は探検家の記録道具、ある時は布教の道具として描かれ、各時代・各地域における思想や時の権力を表してきたのです。
やがて人々が地理的な知識を身に付け始めると、地図にはさらに強力なメッセージが込められ、描かれた細部から地図製作者の理想と葛藤が垣間見えます。
本書では、主題図、海図、極投影図、漫画地図、すごろく地図、等温線図、パノラマップなどの多様な地図と、プトレマイオス式、メルカトル図法、ハート型図法、モルワイデ図法など様々な図法の地図を、製作者の人生と共に解説します。
■目次
1章 地図製作の夜明け ポイティンガーからケプラーまで
2章 オランダ黄金時代 近代地図の台頭
3章 フランス実証主義者の地図学的想像力
4章 植民地主義の地図製作
5章 東洋の視点 東アジアの世界観
6章 地図と科学
7章 風変わりな地図 説得型の地図
8章 19世紀 紳士の旅行者と安楽椅子の冒険家
9章 存在した世界、存在しなかった世界
■著者
ケヴィン・J・ブラウン(KEVIN J. BROWN)
希少な古地図を広く扱う総合ディーラー「Geographicus Rare Antique Maps」オーナー。ベニントン大学で「巡礼」を専攻し、実践を通して学ぶ理念を地図取引に適用。初期のアマゾン探検家や地図製作者、ヨーロッパの商人や測量技師、旅人を理解するため、ギアナ高地の原生熱帯雨林でサバイバル術を学び、ローマ街道を数か月かけて走破。地図学の他、彫刻、印刷、製図の技術も研究。冒険や研究によりかつて人々が直面した問題を体験することが古地図の真価を味わう力に資すると信じる。著書に世界史を楽しめる本書『A JOURNEY BACK IN TIME THROUGH MAPS』。
■訳者
石原薫
訳書に『プロダクトデザイン101のアイデア』『アニメーションの女王たち』『姿勢としてのデザイン』(フィルムアート社)、『ピクサー流創造するちから』(ダイヤモンド社)、『未来をつくる資本主義』(英治出版)等。
地図の歴史は、科学/宗教、物理的/精神的、現実/虚構、理論/実用、中立性/説得性の間を、揺れ動きながら発展してきました。古代ローマ帝国内の移動手段に始まり、ある時は探検家のルートを記録し、ある時は宗教の布教用に描かれました。多様な地図を読み解けば、時代や国、そこに生きた人々の思想や、地図製作者の理想や葛藤(メッセージ)が、見えてきます。
本書では、主題図、海図、極投影図、漫画地図、すごろく地図、等温線図、パノラマップなどの多様な地図と、プトレマイオス式、メルカトル図法、ハート型図法、モルワイデ図法など様々な図法の地図を、製作者の人生と共に解説します。歴史、地図学、地政学、美術や古地図ファンにもおすすめの1冊です。
旅の始まりは、古代ローマの広大な道路網を描いた最も古い地図の1つ「ポイティンガー図」と、人々の精神世界も描いた「ヘレフォード図」から。その他、初めて新大陸を「アメリカ」と呼んだ、ヴァルトゼーミュラーの「全宇宙誌」やオロンス・フィネの「ハート型図法の地図」、ミュンスターの「プトレマイオス図法の地図」「『宇宙誌』収録地図」「メルカトル図法による世界地図」、ビュンティングの「クローバー型の主題図」、エッケブレヒトの「全地球線図」を掲載。未知の世界への豊かな想像力を味わえます。
続いて、舞台は貿易と商業を基盤に世界的な帝国を築いたオランダへ。スター地図製作者たちが台頭し、航海術を発展させたメルカトル図法や、バロック様式の広がりによって、美しく劇的な地図が誕生しました。オルテリウス『世界の舞台』、モンタヌス「聖書地図」、「ドレークの世界一周」を讃えた地図、絶対王政下の宮廷道化師を描いた地図の他、キリスト教・ギリシア哲学・プトレマイオス的世界観・ルネサンス科学・神話を融合した幻想的な地図や舟形図、「12カエサル地図」も掲載。
やがて地図学の中心地はパリへ。「フランス地図製作の父」二コラ・サンソンの活躍後、フランス王立科学アカデミーが設立され、様々な学派に分かれた地図学者の間で、独自の思想が議論されました。探検家や航海士の報告をもとに科学的な描写にこだわった地図が生まれた一方で、中国の伝説的な土地「フサン」を描く地図もありました。
植民地時代の地図は、文化的・経済的・軍事的支配力を強く表し、製作者は国土の現状理解と領土拡大への期待を、支配者の視点で描き出しました。「大英帝国」の海外領土が赤色で塗られた地図や、キリスト教布教の主題図、航海計画に役立つ陸海図、複雑な王室のネットワークも見て取れる地図などを掲載しています。
中国、日本、朝鮮の地図製作の独自の発展も紹介します。中国の「坤輿万国全図(マテオ・リッチの地図)」は東西の地図製作スタイルを統合し、日本では伊能忠敬が『大日本沿海輿地全図』で日本の海岸線を描き、傑作とされました。仏教的世界観に基づいた日本初の印刷地図や、江戸~明治時代に遊ばれた「世界を一周するすごろく地図」なども掲載。
16世紀以降、海洋学、気象学、地理学の理論を表すために地図が作成されます。地図製作者は地図を使って、地図そのものよりも壮大な科学的思想を表現し、近代文明の賛美を地図に込めるようになりました。重要な探検家のルートが示された地図も描かれます。
19世紀後半~20世紀半ば、地図は人を説得する道具の段階に。国を漫画のように擬人化した地図、第一次世界大戦時のプロパガンダ地図「ドイツの野望」、ピアソン牧師の「宗教分布図」、エールフランス航空のポスターなど、地図には強いメッセージが込められます。主張の効果的なアピールのため、地理を大幅に歪めた奇抜な地図も描かれました。
蒸気船と鉄道の発達に伴って国際旅行が人気となり、石版印刷(リトグラフ)の発明によって、地図製作も進化しました。旅行者や移動者向けに異国情緒あふれる鉄道地図が描かれ、洗練された紳士の書斎には精巧な挿絵入りの豪華な地図帖が飾られました。ジュール・ヴェルヌの『八十日間世界一周』に影響を与えたとされる地図も掲載。
地図製作者たちはときに現実と違う世界を描く衝動に駆られ、天空の神々や未知の大陸を想像したり、政教一致のプロパガンダ推進の地図を描いたりして、社会に寓意的なメッセージを伝えました。秘密結社「フェリシテ(幸福)団」の「幸福の島の地図」など、人生を壮大な旅になぞらえた、装飾的で美しく、幻想的な地図も紹介します。
第1章 地図製作の夜明け ポイティンガーからケプラーまで
第2章 オランダ黄金時代 近代地図の台頭
第3章 フランス実証主義の地図学的想像力
第4章 植民地主義の地図製作
第5章 東洋の視点 東アジアの世界観
第6章 地図と科学
第7章 風変わりな地図 説得型の地図
第8章 19世紀 紳士の旅行者と安楽椅子の冒険家
第9章 存在した世界、存在しなかった世界