説得力に富むビジョン、大胆なリーダーシップ、積極的な行動―成功するための企業行動として掲げられているこうした活動が、じつは成功する確率と失敗する確率を最大化してしまうという「戦略のパラドックス」がある。
本書が提供するのは、企業が「戦略のパラドックス」に立ち向かうために、戦略における動く標的を“面”で捉える複数のシナリオを策定し、戦略的柔軟性を持った、「不確実性に対処するためのフレームワーク」である。予測が当たった企業を中心に調査し、予測を回避した企業と比較することでおおむね見過ごされてきたのは、不確実性のマネジメントが決定的に重要だということだ。勇ましい突撃と臆病な撤退だけが、壊滅的な敗北に代わる選択肢なのではない。果敢に進みながらも、業績を損なわずにリスクを軽減する方法は存在する。
本書はこの解を説明しようと試みるものである。
第1章 戦略のパラドックスとは何か?
第2章 完璧な計画
第3章 挑みし者だけが勝利する・・・または敗北する
第4章 適応の限界
第5章 予測の限界
第6章 そろそろ潮時だ
第7章 選択とオプションの創出
第8章 戦略的柔軟性
第9章 起こり得る事態
第10章 予測のつかないことに備える
第11章 戦略の再構築
付録
Kiyoshi Utsugi さん
2022-03-17
戦略にはコミットメントが必要だが、将来のことはほとんど分からなく予測出来ない(コミットメントと不確実性の不一致)というのを戦略のパラドックスと定義してます。 この戦略のパラドックスに陥った例としてソニーのベータマックスとミニディスクを挙げてます。日本人としては嬉しい限り。 本書ではそんな不確実性に対処するためのフレームワークを提唱してます。 文字が小さくて、1ページあたりの文字数が多くて、読むのは大変でしたが、なんとか読み終えることができました。😀
いかちょー さん
2010-04-01
当たりの多く出る宝くじ売り場はハズレも多く出る、のような話で、成功する見込みが最も高い戦略は失敗する見込みも高い、というのが「戦略のパラドックス」。とても示唆に富んだ理論なのだが、本書の大半は理論の検証の解説である。最も具体的な助言は、トップマネジメントに近いほど戦略オプションを考慮せよ、というものだろう。戦略オプションの放棄として「売却」という言葉がよく出てくるのだが、日本文化に馴染むにはもう少し時間が必要かも知れない。